くっつき虫のイタリア紀行(その1)


 この6月の上旬のさわやかな気候のイタリアへ行く機会に恵まれました。長男の働いていたイタリアレストランのシェフがふるさとで日本人女性と結婚式を挙げることになったのです。その際に、男性側の立会い人を息子が頼まれたのです。イタリア語を少しですがしゃべれる息子に付いて行けば不自由はしないと、夫婦で『連れて行け!』とくっつき虫と決め込んだのです。

 イタリアはワインの名産地ピエモンテ州のスピーニョ・モンフェラートという村です。ピエモンテ州はフランスと国境を接し、南西部は地中海に面しています。いわゆる観光地でないことが魅力の一つでしたし、、田舎の結婚式を目の当たりに経験できる、こりゃ、行かない手はないと誰もが考えるのではないでしょうか。

 ミラノから高速道路を飛ばして2時間の田舎です。関空から11時間30分でミラノに着くのです。朝の9時から、夜8時30分までの11時間30分は平均的日本人の労働時間と言われています。その労働時間内に9、600kmも離れた外国に立つ事が出来るなんて不思議ですね。

 ミラノ空港で迎えの車に乗り、高速道路を飛ばしたのですが、日本では考えられないことが起きているのです。フロントガラスが緑の斑点で、覆われているではありませんか。走っている間、ずーっとプチプチと音がして、緑の斑点は限りなく増えるのです。高速道路の廻りはいくら走っても、緑がいっぱいなので、昆虫が多いのでしょう。日没前で飛び交っている昆虫が避けきれずに緑の斑点になっているのです。

 日本と同じ細長い国ですが、山がなくてほとんど平野状態です。その中を突っ走るのですが、いっこうに日が沈まないので聞くと「日没は8時半」(イタリアでは時計を一時間進めた夏時間になっています。夏時間のない日本では9時半にあたります。日本との時差は7時間となっています)と言う返事なのです。暗くなりかけた9時頃やっと、新郎の実家に着いたのですが、眠くて眠くてふらふら状態。日本時間の6時起床から、すでに22時間も経過しているのですから無理もありません。

 ところが、遠く日本の客人の歓迎が待っていたのです。新郎の両親、妹、シェパードに2匹の子犬、そして子猫の待っていました。1階の居間は乗用者が6,7台入る広さで、壁際には燃料の薪が天井まで積み上げられていました。

 15,6人がゆうに座れる長テーブルにはシェフの母親手作りのイタリア料理が次々に出されるのです。ファルファッレ(チョウチョ型パスタ)、ミラノ風カツレツ、鶏肉のトマト煮込み、手製のグリッシーニとパン、そして自家製のワイン。最後はカプチーノかエスプレッソ、そしてティラミス。

 日本時間で言えば31時(翌日朝の7時にあたる)、疲れも頂点、しかも満腹と来たら、私達は眠気でもう限界。でもこれで終わらなかったのです。 <続く>

江口裕之(労働時間短縮研究所所長)


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